ステレオカメラを楽しもう

 ステレオ写真を撮る

ステレオ写真には,左右一対の目が必要である。
左右一対のレンズを備えたカメラ,
それが,
ステレオカメラだ。

ステレオカメラとは

 左右一対の目で撮られた写真が,ステレオ写真である。ステレオ写真を撮るためには,左右一対の目をもつカメラが必要だ。そのようなカメラは,ステレオカメラとよばれる。

▲ステレオカメラの例 (Kodak Stereo Camera, 1954)

リアリスト判とは

 さまざまなフォーマットのカメラがあるように,ステレオカメラにもいろいろな規格のものがある。パトローネ入り35mm判フィルム(135フィルム)を使用するリアリスト判は,ステレオカメラにおけるもっともポピュラーな規格の1つである。
 リアリスト判の画面サイズは,左右23mm×天地24mmでほぼ正方形。フィルムを無駄なく使えるように,3コマごとに左右一対の画像を記録するようになっているため,左右のコマの中心は,(23×3=)69mm離れている。これは一般的な人間の左右の目の間隔に近いもので,自然な距離感のステレオ写真が得られるポイントにもなっている。

▲リアリスト判のフィルム

「コダックステレオカメラ」について

 Kodak Stereo Cameraは,1954年〜1959年に製造された,リアリスト判のステレオカメラである。撮影レンズは,Kodak Anaston Lens 35mm F3.5というもので,Ektarなどの高級レンズが搭載されているわけではない。シャッター速度は,Bおよび1/25〜1/200のみ。ピント調整は目測式で,距離計なども装備されていない。スペック的には,簡素なカメラである。
 Kodak Stereo Cameraの価格は$84.50で,同時期の普及型カメラであるシグネット(SIGNET 35, 1951-1958, $95.00)とほぼ同等,高級カメラであるレチナ(RETINA IIIc, 1954-1958, $185.00)のほぼ半額というものである(*1)。「ステレオカメラ」という特殊な機構をもちながら,普及カメラと同等の価格に抑えられている。
 このカメラは,左右対称の美しいフォルムをもっている。左右についた撮影レンズはステレオカメラとしては当然だが,巻き上げノブと巻き戻しクランク,フィルムインジケータとフィルムカウンタ,シャッターレリーズボタンとシンクロ接点など,徹底的に左右対称のデザインが意識されている。また,ファインダー,絞りレバー,シャッタースピードレバーなどは,中央に配置されている。

ステレオ写真を撮ってみよう

 リアリスト判のカメラは,一般的な135フィルムを使用するので,フィルムの入手に困ることはない。ごく普通に売られているタイプの,カラーネガフィルムで十分だろう。フィルムの装填も,マニュアルカメラとしてごく一般的なものである。
 フィルムを装填したら,露出を決め,ピントを合わせ,シャッターレリーズボタンを押すだけである。このとき,水平がきちんと合っている方が,あとで立体視がしやすいので気をつけるようにしたい。Kodak Stereo Cameraでは,ファインダーのすぐ前に水準器が内蔵されている。これはファインダーを覗いたまま見ることができ,水平を確認しやすくて便利だ。自動化とは無縁なカメラであるが,撮影のしやすいカメラである。
 ステレオ写真の場合,被写体ブレは歓迎したくないし,できるだけ絞りこんで被写界深度を稼ぎたいので,1/25〜1/200という幅の狭いシャッター速度も,これは妥当な値なのかもしれない。このことも含めて,全体として扱いやすいカメラにしあがっているといえる。

▲撮影時には水平に気をつけよう

ステレオカメラが手に入らないとき

 リアリスト判のステレオカメラは,クラシックカメラを扱っているお店に行けば,容易に見つかることと思うが,ステレオカメラを使わなくてもステレオ写真を撮ることは可能である。
 とにかく,左目で見た写真と,右目で見た写真が撮れればよいのである。
 たとえば,同じカメラあるいはレンズ付きフィルムを2台並べて,同時にシャッターレリーズボタンを押せばよい。このとき,2台のカメラが同じピント位置,同じ露出になっていなければ,すっきりと立体視できない場合があるので,マニュアル式のカメラが好都合である。そういう意味でも,レンズ付きフィルムを利用するのが好都合かもしれない。ガムテープなどで2台をしっかりつないでおけば,取り扱いも容易になるはず。
 接写用の微動装置などを利用すれば,カメラを水平に移動させて,左目で見た写真と右目で見た写真を撮ることもできる。この場合は,カメラが1台だけでもステレオ写真が撮れるというメリットがある。左目で見た写真と右目で見た写真を撮るときに,大きな時間差が生じるため,被写体がまったく動かないような場合でなければ難しい。

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(*1) http://www.kodak.com/global/en/consumer/products/techInfo/aa13/aa13pg2.shtml

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